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番外編 忍び寄るズーノンの影

最初は気のせいだろうって然程気にも止めなかった。 でも、誰かにじっと見られている気がして、息をつめ、そーっと辺りを窺ってみた。 すっかり陽が落ち、辺りは暗くなり始めていた。 やっぱり気のせいなのかな? 一旦視線を戻し、小さくため息をついた。 でもな・・・・・・ 再び、チラッと周囲に視線を流すと、今度は見られている気配はしなかった。 「どうしたの?」 「誰かに見られているような気がして……」 「誰もいないよ」 那和さんが辺りをキョロキョロと見回した。 「マー、きっと疲れている。そのせい」 「そうかも知れないね」 自意識過剰にも程がある。 育児と悪阻で心も体も疲れているだけ。きっとそうだ。 「たいくん、ここちゃん、パパとお兄ちゃん、お姉ちゃんたちいたよ」 太惺を抱っこして、心望は那和さんに抱っこして貰い、ダイニングに向かうと、子供たちは先に夕御飯を食べさせて貰っていた。 大人たちは暖炉の前にあるソファーに座り、気難しい顔付きで何やら話し込んでいた。 鞠家さんと紗智さんはラブホじゃなくて、鏡ケ池まで手を繋ぎ散歩をしていたみたい。 鞠家さん、本当はラブホに紗智さんを連れ込む気満々でいたみたいだけど、今が非常事態で、深刻な状況であることを誰よりも分かっているからか、我慢したみたい。 「紫竜(ズーノン)が何者なのか全く情報がない」 「そうか」 警察庁の捜査員・須賀井としてインターポールに派遣された経歴を持つ鞠家さんでさえ、黒竜に関しては知らないことの方が多いみたいだった。

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