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番外編 忍び寄るズーノンの影

「あんまりしつこいと、マーに嫌われるよ」 洗濯物を両手で抱えたエプロン姿の那和さんが開けっ放しのドアから中に入ってきた。 「焼きもち妬きに何を言っても、油に火?何か違うけどまぁいっか。とにかく、まずはマーの体と、あかちゃん大事にしないと」 那和さんに耳の痛いことをさらりと言われ、 流石の彼も言葉に詰まっていた。 「あくまで未知を守るためだろう?それは分かっている。分かってはいるが……」 最後の最後まで駄々を捏ねていた彼。 橘さんや柚原さんに説得され渋々ながらも、腕輪を右の手首に付けてくれた。 「あとで俺の愛人(アイレン)だって、彫り直してやるからな」 「遥琉、あなたという人は………日本語と中国語では意味が全く違うということをちゃんと理解していますか?」 橘さんがこめかみに手をあてて、やれやれと呆れたようにため息をついていた。 「那和さん、紗智さんは?」 「鞠家さんが連れていった。今頃、ラブホでイチャイチャしてる」 「おぃ那和!余計なことを言うな!遥香の前だぞ」 彼が急にそわそわし始めた。 「だって本当のことだもの。新婚なのに別居。鞠家さん、紗智に久し振りに会って、我慢出来なくなった」 彼に何を言われても動じない那和さん。 「気のせいか?那和まで段々と橘に似てきているような………」 「仕方ないでしょう。いつも一緒にいるんですから」 橘さんが何気に発したその一言が気に食わなかったのか、柚原さんまで焼きもちを妬いて不貞腐れた。 「おぃ、おぃ、緊急事態なんだぞ。夫婦喧嘩は他所でやってくれ。遥琉、折り入って話しがある。橘、お前らもラブホに行って仲直りしてこい。一番近いところはここから車で10分のところにあるぞ」 「惣一郎さん‼」耳まで真っ赤にし珍しく狼狽える橘さん。柚原さんの視線も宙を彷徨っていた。

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