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番外編 暗澹

南先生から紹介して貰ったといえ初めて受診する病院に緊張してソワソワしながら待っていると、白衣を羽織ったすらりと背の高い女性に声を掛けられた。 「もしかしてあなたが卯月未知さん?」 「は、はい」 びくびくしながら答えると、クスッと笑われた。 「そんなに緊張しなくてもいいのに。私の名前は厚海(あつうみ)です。南先生とは同期なのよ」 「そうなんですか」 南先生の名前が出た途端、彼の眉がピクピクと動いて逃げ腰になった。 「ちょっと、ご主人」 「は、はい!」 先生にじろりと睨まれて、慌てて背筋をぴんと伸ばす彼。額の冷や汗を手で拭いながら、たじたじになっていた。 「はじめに言っておきますね。ここは市民の皆さんが利用する公立の病院です。未知さんはあくまで南先生の身内ということになってます。なので、菱沼組の名前を出さないように。それと揉め事は一切断りします。いいですね?分からないようなら復唱しますか?」 「いえ大丈夫です」 答えないでいたら容赦なく突っ込まれた。 「では診察になりますね。こちらにどうぞ。ご主人と付き添いの方も一緒でいいですよ」 先生が診察室に案内してくれた。 「マー、ボクそこで待ってるから」 那和さんが扉の前の長椅子を指差した。 「一緒でも構わないのに」 「ううん、大丈夫」 「じゃあ俺も那和と一緒に待ってようかな」 冗談半分で言ったつもりなのに、先生にはそうは聞こえなかったみたいで、またまた睨まれて、しゅんとしていた。

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