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番外編 ごめんね、

「ゆっくり深呼吸をして下さい。私が付いてますから。大丈夫ですよ」 橘さんが優しく背中を擦ってくれた。 その時、瞼にふと女性の姿が浮かんできた。 目映い光に遮られ顔まではよく見えなかったけれど、全身血塗れで、真っ赤に染まったナイフの先からは血がひたひたと床に零れ落ちていた。 「死ね、この疫病神!」 気が狂ったように髪を振り乱しながら、そのナイフを高く掲げた。 「僕はどうなっても構わないから、子供達とおなかの子だけは助けて!お願い!」 迫り来る恐怖と炎に包まれながらありったけの声で叫んだ。 「ーー………未知さん、しっかりして下さい。未知さん!」 橘さんの声がなぜか遠くに聞こえる。 こんなにも近くにいるのに何で? 「ーー・・・・ママ」 「ママ」 誰かが呼んでいる。 小さな手が髪や頬をペタペタと優しく撫でてくれている。 落ち着く心地いい温もり。 そしてふんわりと柔らかな匂い。 これは・・・・・一太と遥香だ。 「ママだいじょうぶ?」 目を開けると真っ先に心配そうに顔を覗き込む二人が視界に飛び込んできた。 (ごめんね心配を掛けて……) 「たちばなさんに、ママがおきたよっていってくるね」 一太がベットからピョンと飛び下りると、バタバタと元気よく廊下に飛び出していった。 少しの間、気を失っていたみたいだった。

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