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番外編 穏やかで愛おしい日々

「思っていたより軽いな。腹の子の分までちゃんと飯を食べて、早く良くなれ。七海、何か掛けるもの。バスタオルでも何でもいい。橘は二人の面倒をみてくれ」 てきぱきと指示を出すと、そのまま本当に外に向かった。 「一応念のため、遥琉の許可はもらってある。あとで焼きもちを妬かれて、駄々を捏ねられても困るからな」 ずっと家の中にいたせいか、陽の光が眩しすぎて思わず目を眇めた。 「遥琉も橘も過保護だからな。引き籠っていたらもやしになっちまうぞ。明日、天気が良かったら散歩に連れていってやる」 鷲崎さんは機嫌良く笑っていた。 「遥琉から記憶がないって聞いて、顔がこの通り怖いだろ?だから、未知が俺を恐がり、パニックを起こさないか心配だったんだ。だから、七海だけ行かせるつもりだった。でも、どうしても未知の世話がしたくてな。良かった・・・・」 何気に目が合うと、安堵し穏やかな笑みが返ってきた。 「遠慮することも、敬語も使う必要もない。何でも言え。分かったな」 鷲崎さんの優しさが涙が出るくらい嬉しくて。うん、大きく頷いて、太い首にぎゅっとしがみついた。 あっ!七海さんに焼きもち妬かれちゃうかも。 慌てて腕の力を緩めたら、 「七海は、未知には焼きもちを妬かない」 今度はゲラゲラと声を上げ笑い出した。 「あっ、ママだ‼」 一太と遥香がすぐに気が付いて駆け寄ってくれた。 「そんな目で見んな。俺が未知を落とす訳ねぇだろ」 一太と遥香にも心配そうに見詰められて。鷲崎さん、少し仏頂面になっていた。

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