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番外編 命をかけた彼の一途な想い
「信孝の弟の龍成だ。光希が…………光希は俺たちのカミさんだ。どうしても未知の世話がしたいっていうから。俺達も付いてきた。それにしても良かった。未知も赤ん坊も元気で」
龍成さんが嬉しそうにおなかを撫でてくれた。
それを見た瞬間、彼の表情が強張り目付きが変わった。
ただでさえ機嫌が悪いのに。火に油を注いだからそれこそ収拾がつかなくなるのに。
「お前まで人の女房にべたべた触ってんじゃあねぇ」
「別に減るもんじゃないだろ」
「あ?」
遥琉さんも、龍成さんも喧嘩は駄目。
慌てて二人の腕を掴んだ。
「そうやって未知が甘やかすから、鳥飼も龍成も付け上がるんだろう?違うか」
「そういう言い方ないだろう」
「五月蝿いな。未知、帰るぞ」
がしっと手首を掴まれそのまま駐車場へと連れていかれた。
そして今に至るわけで………
「未知~~!」
どうしたら彼の機嫌が直るのかな?悩みながら車から下りると千里さんが底抜けに明るい笑顔で出迎えてくれた。真っ白なシャツにお尻が見えそうなミニスカートといういつもの格好だ。
「あらやだ、また焼きもち妬いてるの?」
「五月蝿いな。遼成達を焚き付けたのはお前か」
「別に焚き付けてなんかないわよ。上総ちゃんも、播ちゃんもみんな、みんな未知に会いたくてしょうがないんだもの。仕方ないでしょう」
「あのな、千里……」
彼に何を言われても全く動じない千里さん。
さすがだ。
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