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番外編 スーレン スー

橘さんが上京して数日は、穏やかに日が過ぎていった。 ーー表面上は。 実際はといえば、温泉街で連続不審火が相次ぎ、警察と地元の消防団が警戒を強めていた。 そんな最中、一太の通う幼稚園で建物の一部を焼く不審火が起こり、しばらくの間臨時休園になった。 用心に越したことはないと、非番の蜂谷さんが駆け付けてくれた。 「遥琉、いい知らせと悪い知らせがある。どっちを先に聞きたい?」 車から荷物を運び終え、蜂谷さんが煙草を口にくわえ彼に話し掛けた。 「俺はどっちでも構わない」 「そうか」 ライターで火を付けようとしたら、後ろからポコンと竹刀の先で小突かれた。 「痛っ!オヤジ!」 「子供達の前だ。喫煙厳禁。火気厳禁。少しは考えろ」 惣一郎さんに言われて、はっとして、煙草とライターを慌ててポケットにしまった。 「ごめんな遥琉、今後気を付ける」 「いや、大丈夫だ。で、さっきの話しの続きだが」 「いい知らせは、彩の精神鑑定の結果が出た。リーのマインドコントロール下にあったとはいえ責任能力を問えると検察官が判断した」 「そうか、良かった」 「悪い知らせは……」 蜂谷さんが躊躇しながらも言葉を続けた。 「………茂原が、姿を消した」 「そうか」 あらかじめ予想をしていたのだろう。 彼も柚原さんも鞠家さんも驚く素振りを見せず、冷静そのものだった。

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