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番外編 スーレン スー

彩さんの公判前手続きまであと三日。 何事もなく無事に終わりますようにと祈ることしか出来なかった。 カンカンと高らかに鳴り響く半鐘の音が温泉街に夕方五時になったことを知らせていた。今日も午後から駐在さんや地元の消防団、それに青年団が総出でパトロールを行っていた。 「不審者に間違われたって聞いて、ごめんなさいね」 和江さんが謝りながら連れてきたのは、組幹部の根岸さんという人だった。 「度会からだ」 分厚い茶封筒を彼に渡した。 「これは……」 「度会と手分けして茂原についていろいろ調べているうちにある事件に行き着いた。今、橘にはこの事件について調べてもらっている」 ある事件とは今から11年前に起きた、今だ犯人の目星が付かず迷宮入りした殺人事件のことだった。 「和江さん、ペンションのバーお借り出来ますか?」 封筒の中身を確認した彼の表情ががらりと変わった。 「えぇ、別に構わないけど」 子供達とここで待ってろ。何かあれば紗智や那和、外で張り付いている蜂谷や若い衆に言え。遠慮することはない。 そう言い残し、彼は柚原さんや根岸さんらを連れて隣のペンションに移動した。

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