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番外編 スーレン スー

子供達と鬼ごっこしたり隠れん坊をしたりしてはしゃぐ紗智さんや那和さんを見守りながら、スマホの画面を操作し、彼が話していた事件を調べるため検索をかけてみた。 その年に起きた殺人事件で迷宮入りした事件は数件あるものの、どの事件も何となくだけど、茂原さんとは無関係な気がした。 「偶然と運命はとてもよく似てる」 子供達の様子を見に来てくれた惣一郎さんがポツリとそんなことを口にした。 「茂原は自分の危機を救ってくれた相手と、思いがけない場所で偶然出会ってしまったんだろう。それが偶然じゃなく、運命なら、互いに惹かれ合うのも無理はない」 ポケットから色褪せた写真を取り出すと、それを感慨無量の面持ちでしばらくの間眺めたのち渡された。 「未知さん、きみが火事の時見た男は、恐らく茂原と一緒に写る三人の少年のうちの一人だろう」 「オヤジ!」蜂谷さんが血相を変えて駆け込んできた。 「お前がいつまでも未知さんにこの写真を見せないからだろう」 「もし未知が過呼吸を起こし倒れたらどうする?赤ん坊に何かあってからでは遅いだろう」 「未知さんはお前が思うほど柔じゃない。記憶を失っていても、遥琉の女房として、極道の女として生きる強さを忘れてはいない。それにあの播本の孫だぞ」 「オヤジ………」 惣一郎さんの言葉にはっとし驚いたように目を見開く蜂谷さん。 「未知、改めて面通しを頼む」 深々と頭を下げられた。

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