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番外編 真の黒幕
「何だてめぇーー!」
「何しに来やがった!」
急に外が賑やかになった。スマホを耳にあてたまま立ち上がろうとしたら、紗智さんと那和さんに止められた。
「マー、子供達と隠れてる」
「動かない」
一太と遥香が、太惺と心望にいい子にしてようね、しーだよ。と小声で声を掛けてくれた。
『一太くん、ハルちゃん偉いですね』
電話の向こうにいる橘さんに誉められ、えへへと恥ずかしそうに二人とも照れていた。
『正々堂々と乗り込んできたのは茂原さんでしょう。未知さんを引き渡すように直接遥琉と話しをしに来たんでしょう』
「マーは関係無いよ。真沙哉の愛人 はこの僕だよ」
前を真っ直ぐに見据え那和さんがすっと立ち上がった。
那和さん行っちゃだめ!
咄嗟に服の裾を掴んだ。
「マー止めてくれるの?ありがとう。でもね、行かなきゃ。彼に謝らないといけないの」
那和さんがにこりと優しく微笑んだ。
「それが僕の役目だから。マー、子供達と紗智と待ってて」
那和さんが寝室を出るとき、電話口から中国語の子守唄みたいな歌が流れてきた。
※『睡吧睡吧,我亲爱的宝贝。妈妈爱你,妈妈喜欢你』
意味が分からずちんぷんかんぷんだったけれど、那和さんの目からは大粒の涙が溢れる出た。紗智さんも泣いていた。
橘さんなりの気遣いだったんだと思う。
たった一つしかない命を大切にしてほしいと。そう願う想いは僕も彼も一緒だもの。
※「シューベルトの子もり歌」
内藤濯訳詞・シューベルト作
を中国語に訳したものを参考にさせて頂きました。
ねむれねむれ 母の胸(むね)に
ねむれねむれ 母の手に
こころよき 歌声に
むすばずや 楽しゆめ
ねむれねむれ 母の胸に
ねむれねむれ 母の手に
あたたかき その袖(そで)に
つつまれて ねむれよや
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