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番外編 護るべき大切なひと
お祖父ちゃんの全く隙のない構えに、惣一郎さんの方が逆に戸惑っているようだった。
「剣道は段数の差が大きいと一度聞いた事がある。有段者相手に全く隙を見せない。さすが、茨木さんだ」
摺り足でお祖父ちゃんの回りを廻る惣一郎さん。
お祖父ちゃんはほとんど動かず、僅かに移動して正面を惣一郎さんに向けるだけだった。
「イヤアッ」と気合いは入れられても、鬼気迫るお祖父ちゃんの表情に気圧されてか惣一郎さんの足は前に一歩も進まなかった。
「いやぁ~~さすがは伝説のヤクザ。畏れ入った」
ふらりと竹刀を下ろすと、深々と立礼をした。
「今はただの隠居だよ。カフェは息子夫婦が切り盛りしているからな。悠々自適の生活だ」
ハハハと笑うお祖父ちゃんに、一太がニコニコの笑顔で駆け寄っていった。
「じぃじも、そうじぃじもかっこいい‼」
興奮してそれはもう大喜びだった。
「ねぇ、ねぇ、いちたもつよくなれるかな?」
「あぁ。勿論だ。護るべき大切なひとを守るためなら人は幾らでも強くなれる。じぃじも、一太のママや、一太やハルちゃん達を守るため、日々体を鍛えている」
「そうじぃじみたく?」
「おぅ、そうだ」
お祖父ちゃんも惣一郎さんも目を細めて、爪先立ちでぴょんぴょん跳ねる一太を温かく見守ってくれた。
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