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番外編 護るべき大切なひと
「あ、あの、すみません」
一人の若い衆がビクビクしながら右手を挙げた。
「おぅ、何だ?」
「播本さん、失礼を承知の上です。オレに稽古を付けてください」
ガチガチに緊張しながら腰を九の字に曲げた。
「そうビクビクしなくてもいいのに」
苦笑いしながらも、若い衆に竹刀を渡した。
「俺は素手で十分だ。どこからでもいいから掛かってこい。遠慮はするな」
「はい」
お祖父ちゃんの懐の広さに、器の大きさに若い衆のみんなは一様に深く感銘を受けていた。
「みなの士気が高まったな遥琉」
朝イチで駐在所に行っていた鞠家さんが帰ってきた。
「あぁ、茨木さんや惣一郎さんにはどう頑張っても敵わないよ」
「そうだな」
朝方にまた不審火が起きた。今度はここから100メートルも離れていないごみの集積所が狙われた。
茂原さんも玉井さんも依然として行方が分からないままだ。
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