803 / 3592

番外編 護るべき大切なひと

「あ、あの、すみません」 一人の若い衆がビクビクしながら右手を挙げた。 「おぅ、何だ?」 「播本さん、失礼を承知の上です。オレに稽古を付けてください」 ガチガチに緊張しながら腰を九の字に曲げた。 「そうビクビクしなくてもいいのに」 苦笑いしながらも、若い衆に竹刀を渡した。 「俺は素手で十分だ。どこからでもいいから掛かってこい。遠慮はするな」 「はい」 お祖父ちゃんの懐の広さに、器の大きさに若い衆のみんなは一様に深く感銘を受けていた。 「みなの士気が高まったな遥琉」 朝イチで駐在所に行っていた鞠家さんが帰ってきた。 「あぁ、茨木さんや惣一郎さんにはどう頑張っても敵わないよ」 「そうだな」 朝方にまた不審火が起きた。今度はここから100メートルも離れていないごみの集積所が狙われた。 茂原さんも玉井さんも依然として行方が分からないままだ。

ともだちにシェアしよう!