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番外編 護るべき大切なひと

忙しいランチタイムがようやく過ぎて、遅めのお昼をみんなで囲んでいたときだった。 「オヤジ‼」 一人の若い衆が息を切らし、血相を変えて駆け込んできた。 「また不審火か?」 「いえ、ラジオのニュースで、黒竜(ヘイノン)が潜伏しているとたれ込みがあった別荘にサツが踏み込んだら、茂原らしき30代くらいの若い男の遺体が発見されたって・・・・今、速報が流れてます」 「何?」 その場に居合わせた全員の顔色が変わった。 「場所は?この近くか?」 「詳しいことは何も」 「そうか」 それまでの和気あいあいとした和やかな雰囲気が一変した。ピリピリとした何ともいえない緊張感に包まれた。 「遥琉さん」 椅子から立ち上がった彼の手を思わず握り締めていた。 「置いて・・・・いかないで・・・・」 「ごめんな、未知」 哀しげな眼差しで見詰め返された。 「遥琉、お前は残れ。儂が代わりに行く」 「そういう訳にはいきません。未知の側に居てあげてください」 「橘がいないんだ。お前がみんなを守れ。年はとっていても、まだまだ若い者には負けんぞ」 お祖父ちゃんがすっと立ち上がると、若い衆が背凭れに掛けてあったコートをお祖父ちゃんに渡した。 「弓削と根岸に連絡しておけ。外にいる若いの何人か借りるぞ」 そう言うと颯爽と肩に羽織り、意気揚々と出掛けていった。

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