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番外編 心望の初節句

「黒竜と当局に追い詰められ、死ぬ運命だった俺を助けてくれたのは一太と遥香だった」 ポカポカと温かな日射しが射し込む園庭で元気に遊ぶ子供たちを眺めていた地竜さんが独り言のようにぽつりと呟いた。 「紫竜に撃たれ朦朧とする意識の中、無意識に留守電の再生ボタンを押していたんだろう。スマホから一太と遥香の元気な声が聞こえてきた。ディノンさん頑張れ、おじちゃん頑張れって。それを聞いたら不思議と力が沸いてきた。何がなんでも生きなきゃならない。こんな所で死ぬわけにはいかないって。こんな俺でも怖がらずに慕ってくれる一太や遥香のために絶対に生き抜く、そう心に誓った」 スマホを胸の内ポケットから取り出すとギュッと大事そうに握り締めた。 「一太、何度も電話を寄越してくれていたみたいだ。三月三日はここちゃんの初節句と、一太の幼稚園の保育参観日があるから、ディノンさんも来てねって。そう言われたら来るしかないだろう。そんなに見るなよ。たかが嬉し涙だ」 くすりと苦笑いすると恥ずかしそうに顔を逸らし更に言葉を続けた。 「だから卯月に一週間後日本に一時帰国するってメールしたんだ。黄のこともあるし・・・・まさか聞いてなかったのか?」 ぽかんとしていたら、驚いたような声が返ってきた。

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