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番外編 パンドラの箱に最後に残るのは
地竜さんはしばらくの間黙り込んでいた。
窓に激しく叩きつける雷雨の音だけがし~んと静まり返った部屋の中に響いていた。
「リーは無精子症だった。有能な後継者を作るため、破門される数年前から中国系マフィアと裏で手を組みシンガポールで秘密裏にクローン人間の研究をはじめた。研究自体は数年で頓挫したが、リーはそれに懲りず殺人鬼や異常性愛者など犯罪者の精子を集め、自分の生殖可能な精子を何千、何万の中から探しだし、遺伝子を操作し、彩やカオルが産んだ子ども以外に4人の試験管ベビーをこの世に誕生させた」
地竜さんが重い口をゆっくりと開いた。
「卯月、鞠家。勘の鋭いお前らならその4人が誰か、おおかた察しが付くだろう」
地竜さんの手が微かに震えていた。
それは彼も気付いていて。
「そんな……まさか……。でも、待てよ。そうなるとリーは自分の息子と………」
信じられないとばかりに顔を横に振った。
リーさんが昇龍会を破門され、日本から海外に逃亡し24年あまり。その数年前からクローン人間や試験管ベビーの研究をしていたということは、つまり………
「嘘………そんな事って………」
頭に中にすぐ浮かんだのは、いつも側にいてくれるかけがえのない、大切な二人。
『冗談………だろう』
ガタンと襖の向こう側から崩れ落ちる音と、ウーさんの声が同時に聞こえてきた。
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