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番外編 パンドラの箱に最後に残るのは

「俺の兄はその研究所で研究員をしていた。リーから4人の子どもたちを育てて監視しろと命じられた。翡翠《フェイツイ》、琥珀《フーボー》、紅宝石《ホンバオシー》、そして瑪瑙《マーナオ》ーーお気に入りの女を宝石の愛称で呼ぶリーは、4人の男子にもそれぞれ宝石の名前を与えた。大勢いた大人の中の一人にしか過ぎないから、二人には俺や兄の記憶がほとんど残っていないはずだ。リーはこの中でも特に、琥珀と瑪瑙を異常なまでに可愛がった。琥珀と瑪瑙がその後どうなったかあとは分かるだろう?」 琥珀は紗智さんの元々の名前。 瑪瑙は那和さんの元々の名前。 地竜さんの話しを聞いているうちふつふつと怒りが込み上げてきた。 身勝手な大人の理由で人生を狂わせられた二人。怒りをぶつける相手は生死不明。無性に腹が立ってきた。 「青蛇と黒竜の争いはただ単なる親子喧嘩だ。俺は真沙哉を助けたんじゃない。兄が自分の息子として育て、命懸けで守ってきた琥珀と瑪瑙を助けたかっただけだ。未知、卯月、鞠家、いままで黙っていて悪かった。新しい名前を付けてもらい未知のそばで幸せに暮らす二人を見ると言いたくても言えなかった。このまま未知や卯月の子どもとして、一太やハルちゃんたちの兄として幸せに生きてほしいとそう願っている。だから二人にはこの事実は話さず墓場まで持っていくつもりだ」 地竜さんは涙を堪え紗智さんと那和さんへの贖罪の言葉を何度も口にした。

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