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番外編 みんなが待ち望んだ新しい命の誕生
「ハルちゃん寝てしまいましたね」
僕の隣に寝そべり陽葵をあやしていた遥香。仲良くふたりしてそのまま眠ってしまった。
「たまにはテレビでも見ましょうか」
リモコンを片手で操作するとベットの脇にある冷蔵庫を開けた。
「お茶でいいですか?」
「はい」
ペットボトルを手渡された。
これからオンラインで本部との会合があるみたいで、慌ただしく彼が組事務所へと向かった。
「もしかして、根岸さんの息子さんのことかな」
「勝手に本部の名前を使って、詐欺まがいのことをしていたみたいです。相当数被害者がいる模様です」
「根岸さん真面目で責任感が誰よりも強いから、全部自分が悪いって抱え込んで、迷惑を掛けたから辞めるなんて……痛っ……」
陣痛のときよりも強い痛みに顔を歪め、ペットボトルを握り締めた。
「大丈夫ですか?」
橘さんが背中を優しく擦ってくれた。
「そういえば老後は惣一郎さんたちの側で伊澤さんと亜優さんと3人、悠々自適、自給自足の田舎生活を送りたい。そんなことを言ってました」
「根岸さん、まだ60歳にもなっていないのに。まだまだ若いってお爺ちゃんと競っていたのに……根岸さんって本当に面白い」
ぷぷっと笑ったら不思議と痛みが和らいだような気がした。
「あれ奏音くんは?」
「老い先短いじぃじといるより、ここに残りみんなからの愛情をたくさん注いでもらって育ったほうが幸せだって、そんなことをいってました」
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