｢ごめんね、お仕事なのよ」 ｢ヤダヤダヤダ」 幸さんはぶんぶんと首を横に振った。寝起きだから余計に機嫌が悪い。 ｢チカ、早く行け」 龍成さんが幸ちゃんを抱き上げた。 ｢はなちて！」 手足をバタつかせ大暴れする幸ちゃんを、光希さんとふたりかがりでなんとか押さえた。 チカちゃんが羽鳥湖に向かったあと、ヤクザみたいな男たちが中にいた男女を人質にとり立て籠ったと続報が流れた。 座布団の上に置きっぱなしにされてあったリモコンを見つけた太惺。テレビの前にちょこんと座りさっそくリモコンを弄りはじめた。ぱっとテレビが映り、驚いて目をまんまるくする太惺。 ｢見ちゃだめ」 紗智さんが血相を変えて駆け付け、テレビ本体の電源を切った。 大きな声にびくっとして小さな体が震える。怒られたと思ったのか太惺がリモコンを両手で握り締めたままギャンギャン泣き出した。 ｢たいくんごめんね。ビックリしたよね。あのね、怒った訳じゃないんだよ。お願いだから泣き止んで」 抱き上げて必死にあやすものの一向に泣き止まず、橘さんに助けを求めた。 ｢ままたんは夕御飯の準備に忙しいから、ぱぱたんっておいで」 柚原さんが真っ先に駆け付けてくれた。 ｢何があったんだ？」 太惺を抱っこすると背中を優しく擦りながらあやしてくれた。