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番外編 羽鳥湖で事件勃発

「チカちゃんが向かったところ」 「例の立て籠り事件か」 「うん。窓が開いて、裸の女の人が、若い子ね、げらげら笑いながら2階から飛び降りた。あっという間の出来事だった」 「生放送だからな、撮影していたマスコミもまさかと思いビックリしただろうよ。これがクスリの怖さだ」 「たいくんにどうしても見せたくなった」 「そうか。ありがとう紗智」 柚原さんは紗智さんを宥めた。 鞠家さんと橘さんに焼きもちを妬かれないか、内心ドキドキしながらだけど。 いつの間にか太惺がぴたりと泣き止んでいた。 「リモコンは食べちゃ駄目だよ。あ~~もぅ、よだれだらけになってる。紗智、なにか代わりのもの。なんでもいい」 「ちょっと待って。おやつ貰ってくる」 紗智さんが台所に急いで向かった。 「ママ、ぱぱたん、タオルある?」 遥香がバタバタと走ってきた。 「どうしたの?」 「パパ、かっぱさんみたくなってる」 「かっぱさん?」 「うん、かっぱさん」 「午後からずっと空がどんより曇っていたからな。やっぱり降ってきたか」 柚原さんが不安そうに窓を見上げた。 「たいくん、ぱぱたんとお姉ちゃんとおやつを食べて待っててね」 太惺の頭を撫でてからすっと立ち上がり、脱衣所からバスタオルを何枚か持ち出し玄関に急いで向かった。 「外に出たとたんに大粒の雨がばたばた落ちてきたんだ。ありがとう未知」 「遥琉さんが風邪をひいたら大変だもの」 爪先立ちになってもチビだからせいぜい届くのは胸の辺りまで。手の届く範囲でバスタオルで彼の服を手早く拭いた。 「そうだな。未知とイチャイチャ出来ないもんな」 「もう遥琉さんたら」 冗談を言ってる場合じゃないのに。頬っぺをこれでもかと膨らませると、 「そう怒るな。太惺や心望に見付かる前に着替えてくる」 愉しげに笑いながら寝室へ向かった。

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