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番外編羽鳥湖で事件勃発
立て籠り事件の現場に急行したお祖父ちゃんと蜂谷さんから連絡は一切なかった。
柚さんにぴたりと張り付いている鳥飼さんとフーさんからも連絡はなかった。
「連絡がないということは無事だというこだ。まずは飯を食え」
箸を持ったままぼんやりとしていたら、山盛りのご飯を目の前にどんと置かれてしまった。
気難しい表情でかれこれ三十分近くお祖父ちゃんと電話で話し込んでいた彼。終わったと思ったら今度は遼成さんから電話が掛かってきた。声を掛けるタイミングがなかなか掴めなくて。陽葵におっぱいをあげながら、それとなくそっと彼を見ていていたら、そんなに見つめられたら恥ずかしいだろう。クスッと苦笑いされてしまった。
「チカちゃん、大丈夫かなって心配で」
「国井を一人残して先に逝くような、そんな無茶はしないよ。大丈夫だ」
不安を一掃するかのようににっこりと微笑んでくれた。
「陽葵はいいよな、ママのおっぱいが飲めて。一人占めだもんな。たく、また電話だ。今度は誰だ」
ぶつぶつと一人言を言いながらスマホを耳にあてた。
光希さん、龍成さん、奏音くんは菱沼金融があった場所で家族水入らずの時間を過ごしているはず。すぐ隣が組事務所だから、鞠家さんと根岸さんらに掴まっていなければいいけど。
県警と犯人側の睨み合いは依然として続いていて、解決の糸口さえ見えず膠着状態になっている。彼が教えてくれた。
夢華さんは警察が到着する寸前に、あの義足のひとと一緒に裏口から逃げたみたいで、消息不明のままだ。
『未知いる?』
彼のスマホから千里さんの声が聞こえてきた。
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