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番外編 あやみさんが消えた
睦さんから俺も颯人さんも無事だ。心配かけてごめん。そう電話があったのは、子どもたちがお風呂に入れてもらってるときだった。
「賑やかでごめんなさい。声、聞きづらいよね?」
ーううん、大丈夫ー
「チカちゃんから伝言を預かってたの。ムーは睦、チィェンシァは千夏と書くみたいだよ。離れ離れになっても千夏さんは睦さんのことを片時も忘れずにいる。生きてさえいればいつかきっと会える日が来る。だから、母親のことを嫌いにならないでいてって。睦さんが嫌いだから置いていった訳じゃないって」
ーありがとう未知。千里さんや甲崎さんにも言われた。母親を嫌いになるのは真実を知ってからにしろって。だから、待つことにした。生きていればいつかきっと会える。そう信じて……ー
ーねぇ睦、未知って聞こえたんだけど……ー
あ、千里さんの声だ。
ーなに泣いてんのよ。涙は似合わないってさっきも言ったのに。未知、久し振り。元気?ー
「はい。千里さんは?」
ー元気よー
そうは言うもののいつもの千里さんの声ではなかった。
「もしかしてあやみさんまでいなくなった。とか……そんな訳ないか。学園のスタッフと一緒だもの」
当てずっぽうで言ったつもりだったけど、
ー東京駅で大阪行きの新幹線に乗り換えて、こだまに乗り込む姿を舎弟たちが確認した。にも関わらず神隠しにあったように忽然といなくなったのー
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