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番外編 ミツさんの正体

「そうか分かった」 電話を切ると椅子の背もたれに掛けておいた上着を颯爽と羽織った。 「遥琉さんどうしたの?」 「菱沼金融に行ってくる。なぁに野暮用だ。すぐに戻るから、子どもたちと待っていろ」 「うん、分かった」 「そんな顔するな」 笑顔で瞳を覗き込まれ、頭をポンポン撫でられた。 「大丈夫だ。心配するな」 「だって遥琉さんに何かあったら……僕……」 じっと見つめ返すと、前髪をすきあげられておでこにチュッと軽くキスをされた。 「僕……何だ?続きを早く聞かせてくれ」 「えっと、その……」 ぐいぐい迫ってくる彼の勢いに気圧され、答えに躊躇していたら、 「未知さん、遥琉をあまり挑発しない方がいいですよ。あとで後悔することになりますよ」 陽葵を抱っこしながら橘さんが姿を見せた。 「遥琉、この緊急事態にあなたという人は……」 「お前こそなに呑気にしているんだ」 「彼は私の知る三本菅先輩ではありません。会ってどうするんですか?」 「あの遥琉さん、橘さん。話しが全然見えないんですけど」 思わず右手を上げた。 「ミツに化けていたのは被害者の会の代表であり弁護士の三本菅だった。弓削が中坊のときの同級生だった男だ。菱沼金融に灯油をまいて火をつけようとした」 「嘘」 にわかには信じがたい事実に愕然となった。

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