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番外編 ミツさんの正体

「手も足も出ないとはまさにこのことだよね。ハハハ」 ミツさんは笑いながら火の付いたライターを下に落とした。 万事休す。誰もがそう思った。でも……。 「あれ?なんで?」 ライターの火がシュッと微かな音を立てて消えたのだ。 ミツさんは予備に持っていたライターを出し、液体の中に放り投げた。何度やってもなぜか灯油に引火しなかった。 「トランスジェンダーで先天性嗅覚障害の女が中坊の時に転校してきた。その女は前の中学校でトランスジェンダーであることを同級生や担任教諭からからかわれ不登校になった。その中学校が放火され、犯人に真っ先に疑われたのはその女だ。両親はその女を親戚に預けた。俺の実家の近所だ。それからだ。地区でたびたび不審火が起こるようになったのは。鈴木聖羅《すずきせいら》。いや、三本菅匠馬《さんぼんすげたくま》。残念だったな。中身はすべて水に交換させてもらった」 ミツさんの表情がみるみるうちに青ざめていった。 「設置されてある監視カメラはお前の気をそらすためのあくまでダミーだ」 ミツさんがその言葉にはっとし、目を見開いた。 はっちゃんかくれんぼうしよう。学校から帰ってくると決まって一太と奏音をここを訪れ、蜂谷さんや亜優さんらとかくれんぼうして遊んでいた。遊びながらカメラをあちこちに隠していたということにようやく気付いたミツさん。 「クソガキども」 悔しくさに歯ぎしりしながら地団駄を踏んだ。

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