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番外編 仕組まれた罠

ーそう、死んだんだ。呆気ない幕切れだったわねー 彼から楮山が殺されたことを聞いた柚さんはさばさばとした。 ー一央がね兄さんに頼み込み、見舞いに来たの。いきなり土下座したから驚いた。体があちこち痛くて動かない癖に無理しちゃって。楮山が死んだくらいでいちいち動揺しないし、それにそんなに私柔じゃないー 「強がるな」 ー強がってないよ。そんな訳……ー 柚さんの声が涙声に変わった。 「柚、きみは生きているんだ。ロボットじゃない。だから、泣きたいときは泣け。怒りたいときは怒れ。暴れてもなにしてもいい。あ、でも、物を壊すのと、子どもたちに八つ当たりすんのだけはぜってぇだめだぞ」 ーありがとう遥琉。じゃない、遥琉さんだー 「呼び捨てでも"さん"つけでも別にどっちでも構わない。根岸も同じことを言ってたが、楮山に土下座させても謝らせたかった。きみがどんな想いでめぐみと優輝を生んだが、この七年と十ヶ月、どれだけ泣いたか、辛く苦しい想いをしてきたか、楮山に文句のひとつも言ってやりたかった。ごめんな、力及ばずで。すまない」 ーなんで遥琉さんが謝るの。謝る必要ないのにー 柚さんは電話の向こうで声を押し殺し泣いていた。

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