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番外編 哀しきひと

「南先生、あのときは病院に大変な迷惑を掛けてしまいすいませんでした」 青空さんが緊張した面持ちで深々と頭を下げた。 「なんのことかしら?」 「え?」 青空さんが驚いたように顔を上げた。 「だってあなたはもうスカルじゃないでしょう。罪を償いながら一生懸命頑張っているじゃないの」 南先生の言葉に青空さんは目に涙を浮かべ、何度もありがとうございますを繰り返していた。 「上澤先生はもともと産婦人科のお医者さんだったの。駅の近くに総合病院はあっても、待ち時間が長くていつもこみ合っているから、近所のお爺ちゃんお婆ちゃんは通院しにくいというのがあって、それで院長をしていた産婦人科の病院を娘の南先生夫婦に譲り、診療所を開いたの。気軽に子育て中のママさんたちが相談に来れるようにって小児科も設けたの。うちにはあまり来ないけど、度会さんやお祖父ちゃんに会いによく来るんだよ」 亜優さんに上澤先生って誰?一度も会ったことないと言われて驚いた。組事務所に上澤先生が顔を出しても、亜優さんは菱沼金融かここにいることが多いからどうしてもすれ違ってしまってしまうのかも。 柚原さんに通訳してもらい上澤先生がどんな先生か話しをしていたら、 「ただの酔っ払いだ」 彼が大きな欠伸をしながら居間に入ってきた。 「お酒は大好きだけど、深夜でも子どもが具合が悪くなったら診てくれるし、みんなのお爺ちゃんっていう感じの優しい先生だよ。人情味に溢れ、見た目でひとを判断しない先生だよ」 「今度来たら声を掛ける。将棋の相手をして話し相手になってくれ。若い衆にはなにかと手厳しいが、とてもいい先生だ」 髪をぽんぽんと優しく撫でると、亜優さんの表情が明るくなった。

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