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番外編 弓削さんの弟さん
「ふ……っ……」
舌をねじ込まれ、口内を探られ、くぐもった声が零れる。
掴まれていた頤を揺さぶられたかと思えば、長い指に濡れた唇をなぞられ、全身をひくんと震わせた。
「あっ…」
彼の指先が、触れるか触れないかの柔らかさで唇をなぞるたび、背筋にぞくぞくと甘い痺れが走る。
自分の声とは思えない甘い声を零してしまうのが恥ずかしくて堪らないのに、悪戯するようにそこをなぞられ、擽るように軽く引っ掻かれると、立て続けに声が溢れてしまう。
「お取り込み中失礼します」
この声は柚原さんだ。
「分かってんなら邪魔すんな」
彼が声を荒げた。
「邪魔をする気はさらさらない。オヤジ、厚海が見付かった」
「そうか」
声を出さないように必死に我慢していたら、耳朶に口付けられ、わざとぴちゃぴちゃと音を立てて舐められた。
「あっ……ん」
ひときわ甘い声を上げそうになり慌てて口を手で押さえた。
「で、厚海は?」
むすっとして睨むと、彼が愉しそうに微笑みながら髪をぽんぽんと撫でてくれた。
「どうした?」
なかなか答えようとしない柚原さんに、彼の表情がどんどんと重く沈んでいった。
「そうか。分かった」
その理由はひとつしかない。
それは厚海さんがすでにこの世にいないということを物語っていた。
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