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番外編 弓削さんの弟さん
「どうだ?少しは進んだか?」
彼が様子を見に来てくれた。
「ひまちゃん、私たちはお邪魔みたいなのでお兄ちゃんたちのところに行きましょうね」
橘さんが気を遣ってくれて。陽葵を抱っこして部屋を出ていこうとしたら、
「橘、忙しいところ悪いんだが、夕飯一人分多めに用意して欲しい」
「分かりました」
「お袋の味が食べたいとリクエストがあった」
「そうですか。久弥さんは何時にここに着くんですか?」
「十七時着の新幹線だって弓削が話していた」
「酒盛りがはじまるまであと二時間以上は時間があるんですね」
「久弥は飲まないぞ」
「飲んだら寝ている間に森崎さんに何をされるか分かりませんものね」
橘さんがいなくなったあと、久弥はお酒を少し飲んだけて意識が吹っ飛び、寝てしまうと彼が話してくれた。
「目が覚めたとき、ある組の男が真っ裸で隣に寝ていて、大騒ぎになったことがあったんだ。千里がいうにはそのヤクザに口説かれて逃げ回っているみたいだ。あ、でも森崎じゃねぇぞ」
彼が便箋を覗き込んできたから、慌てて手で隠したら、頬っぺにちゅっと軽く口づけをされた。
「なんだ夫に隠し事か。やましいことがないなら見せてくれてもいいだろう」
「まだ下書きだから、それに字汚いし」
「ふぅ~~ん」
彼が不満そうにうめくと、耳をれろりと舐められた。
「妬くな」
「僕は遥琉だけだよ………っ、ん……」
頤を掬われたかと思うと、僕の唇は彼の唇に覆われていた。
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