2109 / 4014

番外編 かなたくんとなやちゃん

翌朝。起きた順に藍子さんの遺影に静かに手を合わせる子どもたちをスプーンを咥えたまま不思議そうに眺めていた奈梛ちゃん。スプーンを放り投げると、奏音くんの側にぱたぱたと走っていった。 「あ、これ?ママにごはんとお水をあげるんだ。奏音のお仕事なんだ」 奈梛ちゃんは奏音くんの服をぎゅっと握り締めると、藍子さんの遺影を指差した。 「奏音のママだよ。ママの笑った顔、しゃしんでしか見たことないんだよ。なんでって?それは、ひまちゃんくらいの時にママが天国に行っちゃったから。ママがいなくてすごくさみしかった。甘えたいときにいないんだもの。奏音がおばかさんだからママはいなくなった。ずっとそう思っていたんだ。でもね」 そこで奏音くんは言葉を一旦止めると、笑顔で奈梛ちゃんの顔を覗き込み頭を撫で撫でした。 「違ってた。ママは奏音のこと、嫌いじゃなかった。ママは奏音のことが大好きだった。それがやっとわかったんだ。なやちゃんのママはなんでなやちゃんとあやみさんが嫌いなんだろうね。奏音のママは奏音と会いたくても会えないのに。なやちゃんのママはいつでもなやちゃんに会える。奏音からしたらうらやましい。それなのになんで嫌うんだろう。なやちゃんはママ思いのやさしい子なのにね」

ともだちにシェアしよう!