2110 / 4014

番外編 虫の知らせ

「そのうちバチが当たる。見ている人はちゃんと見ているんだ。お天道さまだって黙っちゃいない。どうした奈梛?」 「あーちゃ」 「あーちゃ?」 今度はドアを指差した。 彼が後ろを振り返ったけど、誰もいなかった。 「あーちゃ」 奈梛ちゃんが奏音くんの服を引っ張った。 「一太くん、ハルちゃん見て!」 何かに気付いた奏音くんが驚いたような声を上げた。 「どうした?」 「そこにたっているんだ」 「立っているって誰が?」 「あやみさんだよ」 「は?あやみは病院だ。こんなところにいる訳ないだろう」 あやみさんの姿は子どもたちにしか見えていないようだった。 「もしかしたらこれが虫の知らせなのかもな。死ぬときに大事なひとに会いに来るってよく言うだろう。子どもは純粋だ。だから、俺たちが見えないモノが見えるんだろう」 彼の言葉が意味するもの。それは…… 「遥琉さん、もしかして……」 「花があやみを迎えに来た。つまり、そういうとだろう」 「そんな……」 「最後にどうしても奈梛に会いたかったんだろう。一人置いていく奈梛が心配でいてもたってもいられなかったんじゃないのかな。あやみらしいな。やっぱりお姉ちゃんだな」 誰もいないドアを笑顔で見上げる奈梛ちゃんと奏音くん。なにやら楽しそうに話し掛けていた。

ともだちにシェアしよう!