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番外編あーちゃんまたね、ばいばい

そのすぐあと電話が掛かってきた。 「分かりました。今からそっちに向かいます」 短く答えるとすぐに電話を切った。 「遥琉さん 、もしかして……」 「たった今あやみが息を引き取ったそうだ。りんりんが電話を掛けられる状態じゃないから、斉木先生が代わりに掛けてきてくれた」 「あーちゃ」 「バイバイ。あやみさんまたね」 「なやちゃんとまってるね」 「あやみさん、はやくげんきになってね」 奈梛ちゃんと子どもたちがドアに向かい笑顔で手を振る姿に、堰を切ったかのように涙が次から次に溢れた。 「泣きすぎだ」 「そんなこと言われても」 鼻を啜りながら手で涙を拭うと、 「ほら」 ハンカチを渡された。 「あとは私に任せてください」 「橘、悪いな」 立ち上がった彼に奈梛ちゃんが駆け寄った。 「そうか、あーちゃと会えたのか。良かったな。おじちゃん、りんりんママに会ってくるから、お兄ちゃんとお姉ちゃんたちと待っているんだぞ」 「うん」 まさかお姉ちゃんが死ぬ間際に会いに来てくれたことなど知るよしもない奈梛ちゃん。お姉ちゃんと会えて嬉しくて仕方がないといった様子だった。彼は涙を堪えながら奈梛ちゃんの頭を優しく撫でると、 「未知、橘あとは頼んだ」 後ろ髪を引かれる思いで、急ぎ足で病院に向かった。

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