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番外編 譲治さんと覃さん

その中にはもちろん譲治さんもいた。列には並ばずフラフラと歩き回り、興味津々、あちこちキョロキョロと見ていた。 「譲治、姐さんに挨拶くらいしろ!」 兄貴分の鍋山さんに何度注意されても聞こえていないみたいだった。 「姐さんすみません。ヤツは一人の世界に入ると回りの声が一切耳に入らないんですよ。キラキラした石を見付けると、車が来ているのに道路に飛び出したり、危なっかしくて見てられません。おぃ、譲治、どこ行くんだ!」 鍋山さんが慌てて駆け出した。 「問題児二人の子守りを押し付けられて大変そうね」 「誰も手を挙げないから、蜂谷さんが一人みるのも三人みるのも一緒だから、俺が面倒をみるって手を挙げたんだけど、青空さんが怒り出して……」 「焼きもちを妬いて、ぷんすかまるになったのね」 ぷぷっとチカちゃんが吹き出した。 「蜂谷さんの手を無理矢理下ろさせて、たまたま偶然、隣に座っていた鍋山さんの手首を掴んで挙手をさせたの」 「とんだ災難に見舞われたわね。かわいそうに」 「鍋山さんは相楽さんの弟分だったんだけど、奥さんが地元の方で子どもがいるから福島に残ったの。罪滅ぼしのつもりで誠心誠意覃さんと譲治さんの面倒をみるって引き受けてくれたの」 「そうなんだ。宇宙人と変態にめげず頑張れって鍋山にエールを送らなきゃね」

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