2317 / 3258

番外編 度会さんのお兄さん

一時間後、彼が迎えに来てくれた。 「やはり相楽のカバン持ちをしていた男が犯人だったか」 度会さんから子細を聞き深いため息をついていた。 「度会さんのお兄さんのこと、全然知らなかった」 「俺も知ったのはつい最近のことだ。昔な、どのくらい昔かといえば、未知が生まれるうんと前だ。隣の町にあった結婚式場が、嫁の貰い手がなかった農家の男たちを中国に連れて行って嫁を斡旋していた。度会さんの兄も大金を払い一回り年下の中国人と結婚した。二年くらい過ぎて嫁は第一子を産むため中国に帰国したが、そのあと一度も日本には戻って来なかった。度会さんの兄は組の金を猫ババし、嫁に仕送りしていた。嫁はその金で愛人の男と教団を設立し、息子を教祖にした。俺も写真でしか見たことがないが、息子は度会さんの若い頃によく似てた」 「確か、シェドに殺されたんだよね?」 「最初は誰もがそう思っていたが、地竜が関係筋から聞いた話しでは、嫁の愛人を身代わりにして逃亡したんじゃないかって」 「じゃあ生きてるってこと?」 「確たる証拠がないからなんとも言えないが、信憑性はある」

ともだちにシェアしよう!