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番外編 おしどり夫婦の夫婦喧嘩
「私はそんなことはしませんよ」
「嘘こくでねぇ、俺はおめさんが一番おっかねぇ。二番目は橘だ。食いごと以外で二人に絶対に刃物を持たせちゃなんねぇって常日頃から若いのに忠告しているくらいだ」
「貴方、可愛い私の子どもたちをあまり怖がらせないでくださいね」
「わ、分かってるよ」
紫さんの前で小さく背中を丸めびくびくする度会さんの姿が、橘さんに怒られて小さくなっている彼と重なって見えた。
「ねぇ、知ってた?」
「なにをですか?」
「紫さんの実家のこと」
「僕と同じでごく普通の家庭に生まれ育ったって聞いてます。度会さんとは小学校からずっと一緒で大恋愛の末、二十歳で結婚をしたって」
「逆よ」
「逆?」
「ハチから聞いたんだけど、紫さんは菱沼組の前身となった組の一人娘なんだって。度会さんはお婿さんみたいよ」
「え?そうなんですか?」
思わず大きな声を上げてしまい慌てて口を手で覆った。
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