2327 / 3283

番外編 未来の婿殿

「このばか息子!菱沼組の舎弟の皆さんに迷惑を掛けてんだぞ。それも分からないのか!」 仕事をさぼっているとでも教えてもらったのかな?慌てて駆け付けた壱東さんが、譲治さんの頭を素手で叩こうとした。でも……。 「壱、止せ」 彼が寸でのところで止めた。 「いいか譲治」 縁側から下に下り、サンダルに履き替えると譲治さんと壱東さんにゆっくりと近づいた。 「一太たち小学生組があと十分もしたら帰ってくる。一人でしゃぼん玉遊びをするより、四人で遊んだほうが楽しいぞ」 譲治さんが彼をじっと見つめた。 「子どもたちが石に躓き、転んで怪我をしたら遊べなくなるぞ。それは嫌だろう?譲治、ここをまずは綺麗に掃こうか?」 譲治さんは頷くと、彼にしゃぼん玉の容器とストローを渡し、足元に置きっぱなしにしていた竹箒を拾い、掃き掃除をはじめた。 「息子が迷惑を掛けてすみません」 「迷惑なんて掛けてねぇぞ。だから気にすんな。礼を言うなら俺じゃなく、鍋山に言え。 嫌な顔一つせず面倒をみている鍋山にな。あと未来の婿殿にもな」 「はい。でも本当にいいんですか?息子には勿体ないですよ」 「とうの本人が譲治がいいって言ってんだ。だからいいんだよ」 壱東さんも達治さんと同じで、譲治さんのこれからのことを心配していた。だから、覃さんから譲治さんのことを嫁にもらいたいと言われたときは半信半疑、かなり驚いていた。

ともだちにシェアしよう!