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番外編 噂をすれば影
噂をすれば影。覃さんがどこからともなく姿を現すと、若い衆から竹箒を横取りし、掃き掃除をしながら譲治さんの隣へと移動していった。
「終わったら、一太さんたちとしゃぼん玉で遊べる」
「そうか。じゃあ、さっさと片付けるか?」
うん、満面の笑みを浮かべ大きく頷いた譲治さんを、覃さんは目を細めながら見つめた。
「壱、ほら、見てみ。なかなかお似合いだろう?」
「はい」
「あとは当人同士に任せて、俺らは大人しく見守ることにしよう」
「そうですね」
彼と壱さんが談笑していると、今度は鍋山さんが慌てて駆け付けてきた。
「譲治、口より手を動かせ。覃、喋ってないで、注意するなりなんなりしてくれ」
額の汗をハンカチで拭うと、
「オヤジ、すみません。しっかり言って聞かせますので」
腰を九の字に曲げ深く頭を下げた。
「鍋山、怒ってばかりいると余計に血圧が上がるぞ。ほら、顔を上げろ」
彼が鍋山さんの肩に手をそっと置いた。
「今回の件はお前のせいじゃない。相手が一枚も二枚も上手だった。それだけのことだ」
「いえ、俺がちゃんと塩田を見張っていればこんなことにはなりませんでした。責任はこの俺にあります」
鍋山さんは頑なに首を振り、断固拒否し顔を上げようとはしなかった。
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