2632 / 3299
番外編 覃さんと宋さんの行方
「あ、あの……すみません」
二人なら覃さんと宋さんのことを知っているかと思い、背後から近付きおそるおそる声を掛けた。元九条組の構成員なのかな?二人とも初めて見る顔だった。だから面と向かって声を掛ける勇気がなかった。
「どうした?」
「声が聞こえたような」
「そうか?俺は何も聞こえなかったぞ。気のせいだろう」
立ち止まりキョロキョロとあたりを見回す二人。
「やっぱり気のせいだったみたいだ」
「だから言っただろう」
菱沼組のみんなもそうだけど、鷲崎組の構成員の皆さんものっぽの人が多い。背伸びしても気付いてもらえないなんて。かなりショックだった。こうなったら大きい声で声を掛けるしかない。すぅーと息を吸い込み、再度声を掛けようとしたら、
「お前ら、俺の姐さんが小さいからって無視すんな!喧嘩売ってんのか!」
青空さんの怒鳴り声があたりに響き渡ったからどきっとした。僕より二人がもっとどきっとしたと思う。
「もしかして………きみが菱沼組の姐さん?」
やっと二人が僕に気付いてくれた。
「はい、そうです。初めまして。卯月遥琉の妻の未知です」
何事も最初が肝心だもの。笑顔で自己紹介しぺこっと頭を下げた。
顔を上げると、二人の顔が真っ青になっていた。
ともだちにシェアしよう!