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番外編 覃さんと宋さんの行方

「あ、あの……すみません」 二人なら覃さんと宋さんのことを知っているかと思い、背後から近付きおそるおそる声を掛けた。元九条組の構成員なのかな?二人とも初めて見る顔だった。だから面と向かって声を掛ける勇気がなかった。 「どうした?」 「声が聞こえたような」 「そうか?俺は何も聞こえなかったぞ。気のせいだろう」 立ち止まりキョロキョロとあたりを見回す二人。 「やっぱり気のせいだったみたいだ」 「だから言っただろう」 菱沼組のみんなもそうだけど、鷲崎組の構成員の皆さんものっぽの人が多い。背伸びしても気付いてもらえないなんて。かなりショックだった。こうなったら大きい声で声を掛けるしかない。すぅーと息を吸い込み、再度声を掛けようとしたら、 「お前ら、俺の姐さんが小さいからって無視すんな!喧嘩売ってんのか!」 青空さんの怒鳴り声があたりに響き渡ったからどきっとした。僕より二人がもっとどきっとしたと思う。 「もしかして………きみが菱沼組の姐さん?」 やっと二人が僕に気付いてくれた。 「はい、そうです。初めまして。卯月遥琉の妻の未知です」 何事も最初が肝心だもの。笑顔で自己紹介しぺこっと頭を下げた。 顔を上げると、二人の顔が真っ青になっていた。

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