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番外編 蛇より執念深く、厄介な連中
「姐さん、ご無事で何よりです」
鷲崎組の構成員が二人、腰を九の字に曲げて深々と頭を下げた。
「組長は?無事なの?」
「無事です。宇賀神組の渋川に助けられました」
「無事なら良かった」
「でもまさか福島にとんぼ返りするとは思ってもみませんでした」
「蛇より執念深く、厄介な連中です。どこまでも執拗に追い掛けてくる。渋川が囮になってくれたからなんとか逃げ切ることが出来ました」
入院中の槙島さんに代わり、渋川さんが若頭代理を勤めている。
組長の宇賀神さんは神政会と袂を分かち、昇龍会の傘下に入ることを正式に表明した。
槙島さんは破門。宇賀神さんも引退し、渋川さんが新生宇賀神組の組長に就任するとかしないとか、色んな噂が飛び交っていた。
そこへ森崎さんが姿を現した。
「森崎さん、お久し振りです」
「卯月会長を連れてきてありがとう」
「俺たちはオヤジの指示に従うのみ」
「森崎さんも元気そうで良かったです」
「そのうちめんこい嫁さんを連れて帰る。俺がいない間大変だと思うが、オヤジと姐さんを頼んだぞ」
「はい」
「任せてください」
二人は背筋をぴんと伸ばし大きな声で返事をした。
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