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番外編 お芝居……だったの?
「覃、礼を言う」
大山さんと渡辺さんを見送ったのち鞠家さんが軽く頭を下げた。
「本当のことを言ったまでだ。家族のもとにひとりでも多くの信者を帰す。肝心要の受け入れ体制がまだ整っていないがな」
「そうだな。問題が山積みだな」
「そういえば千夏は?」
「支援団体のサポートを受けながら小夏と二人、都内のアパートで暮らしている。小夏は学校に行かず部屋に籠りっきりだ」
「そうか。前途多難だな」
二人がそんな会話を交わしてい一方で、彼と地竜さんはというと……。
「今、何隠した?」
「別に何も隠していない」
「嘘つけ」
「俺を疑うとはいい度胸だな」
「やましいことがないなら袖の中を見せてみろ」
口喧嘩をはじめていた。
「また、やってる。本当に仲がいいわよね」
お姉ちゃんは呆れ顔だった。
「未知のパンティ、ここにあるのにね」
ふふふとほくそ笑みながらお姉ちゃんのポケットから僕の下着が本当に出てきたからびっくりした。
「お、お姉ちゃん!」
慌てて回収しようとしたら、僕より彼のほうが早かった。
「よっしゃーー!未知のゲット!」
小さくガッツポーズしながら、勝ち誇った顔で地竜さんを見ると、
「卯月、てめえーー」
鋭い目付きで睨み付けた。
「二人とも、喧嘩は駄目よ」
お姉ちゃんがまわりをぐるりと見回した。
「サツは全員引き上げたみたいね。聞き耳を立てている輩はいなくなったわ。二人とも、相変わらずお芝居が上手ね。さすが未知の旦那様たちだわ」
嬉しそうにぱちぱちと両手を叩いた。
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