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番外編 氷山の一角

「嬉しいな。覃がそこまで俺を心配してくれていたとはな。ジョーからプレゼントだ」 鞠家さんがふらりと現れ、覃さんに何を渡した。 「ヤママユのサナギか。これ、丸焼きにすると旨いんだ。食うか?」 「いや、結構だ」 大山さんと渡辺さんの表情がひきつっていた。 「見た目はアレだが……」 「見せんでいい」 大山さんと渡辺さんが目を逸らした。 「覃、二人は大の虫嫌いだ。そのくらいで勘弁してやれ」 鞠家さんが苦笑いを浮かべながら、大山さんと渡辺さんのほうをちらっと見た。 「警察を辞めたことは一度も後悔していない。はなから上層部は俺を辞めさせる気でいたからな。大山、次はお前の番だ。進退を決めるなら早いほうがいいぞ」 「鞠家に心配されるようになったら俺もおしまいだな」 大山さんがゲラゲラと笑いながら頭を掻いた。

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