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番外編 氷山の一角

「瀧田は知らぬ存ぜぬだ。ガサ入れしても何も出てこなかった。海翔の所持品はきれいさっぱり瀧田が捨ててしまった。おかけで警察の面子は丸潰れだ」 「それは大変だったな」 「覃、お前の証言が必要だ。捜査に協力してくれ」 「断る」 「宋が何者か誰も知らないんだ」 「知る必要はない。ヤツも戸籍がない子ども。もともとこの世には存在しない子どもだからな」 二人の表情が一変した。 「宋は日本人か………」 「さぁな」 覃さんが不敵な笑みを浮かべながら言葉を濁した。 「これだけは言える。日本でも人身売買が平然と行われていると聞く。これ以上被害者を増やすな。青空と千夏は帰国できたが、自分が日本人だとは知らずに大陸で過酷な環境下で暮らしている者はまだまだいる。氷山の一角だ。須賀井は………いや鞠家だったな。ひとりでも多く彼らを救出して帰国させようと尽力したが、結果的にはどうだ?お前ら警察は鞠家に何をした。知らないとは言わせないぞ。鞠家が警察を辞めたと聞いて飛び上がるくらい俺は喜んだ。でもまさか鞠家が卯月の婿になり、菱沼組の若頭になっているとはな……これほど驚いたことはない」

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