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番外編 彼のやりたかったこと

「何もわざわざ未知に頼まなくても。龍、お前には柚がいるだろう」 「柚は朝からビールを片手にかなりご機嫌斜めだ。来るなオーラが半端ない。火に油を注ぐようなものだ」 「柚はまた呑んでいるのか?」 「若いのに酒を持って来い。自分は客人だと怒鳴り散らして騒いだ。酒はないと言ったら、いつの間にか出掛けて缶ビールを買ってきた。譲治のヤツ、柚に当たり散らされて顎と額を怪我した。兄貴、すまない」 「は?」 彼の目付きがガラリと変わった。 「柚をコンビニエンスストアに連れていったのはアイツか。昨夜、こってり油を絞られたのに。あれでは足りなかったか」 彼が言っているのはおそらくひろお兄ちゃんの弾よけとしてついて来た本部の幹部の舎弟のことだ。昨夜、べろんべろんになるまで酒を呑まされていた。その本部の幹部と遼禅さんが兄弟の盃を交わしている。お互いが兄弟と呼び合う五分の兄弟だと小耳に挟んだ。ヤクザは縦社会だ。上の者の命令は逆らうことが出来ない。だから断るにも断れなかったんだと思う。

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