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番外編彼がやりたかったこと

「龍成さん、譲治さんが待っているから急いで結ぶね」 「悪いな未知」 爪先立ちになり龍成さんの首にネクタイを掛けた。 「まさか未知にネクタイを結んでもらえる日が来るなんて。なんかいいなぁ~~。新鮮だな~~」 「龍成さん笑わせないでください」 「笑わせてないだろう」 「だって変なことばかり言うから」 「別に変なことじゃないと思うが」 龍成さんの顔を見るたびなぜか笑いがこみ上げてきて。必死で堪えながらネクタイの結び目のしたに出るくぼみを作らないようにしてネクタイを結んであげた。 カシャカシャとシャッターを切る音が何回も聞こえてきて。どきっとして下を見ると、真剣な眼差しでスマホを僕たちに向ける奏音くんと目があった。 「奏音、これは決して浮気じゃないぞ。パパは光希ママ一途だぞ」 龍成さんが狼狽えて慌てていた。 「いやぁ~~未知は真っ正面から見ても上から見ても下から見ても可愛いな。さすがは俺の兄貴だ。目が高い」 「龍、頭は大丈夫か?」 「多分大丈夫だ」 「多分ってあのな……」 彼が額に手を置いた。 「未知に会えて浮かれまくっている裕貴さんよりなぜか俺のほうが浮かれまくっていることにさっき気付いた。未知はやっぱりみんなの未知だ。俺は今日帰るが、奏音と兄貴を頼む。柚の子どもたちも頼むな」 両手を掲げもたげられ、ぶんぶんと振られた。 「はい。任せてください」 「未知がいれば安心だ。譲治が待っているから早く行ってやれ」 踏み台から下りるまで龍成さんが手を掴んで支えてくれた。 「ありがとう龍成さん」 「それは俺の台詞だ」

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