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番外編彼がやりたかったこと

譲治さんは柚原さんと同じで消毒液の匂いが苦手だ。今ごろ、ヤダヤダって駄々を捏ねて騒いでいるはず。 「ひろお兄ちゃん」 「どうした未知。そんなに急いで」 廊下でバッタリひろお兄ちゃんと出会った。 右に行こうとしたら、ひろお兄ちゃんが右に来て、左に避けようとしたらなぜか左に来て。全然前に進めずにいたら、 「掴まえた」 ひろお兄ちゃんの腕が腰に回ってきて。気付いたときには軽々と抱き上げられていた。 「ひ、ひろお兄ちゃん!」不意打ちを食らい声が上擦ってしまった。 「前に抱っこしたときよりも軽いな。ご飯ちゃんと食べているか?陽葵の分までしっかりと食べないと体が参ってしまうぞ」 「ひろお兄ちゃん、心配してくれてありがとう。ご飯はちゃんと食べているよ」 「ほんとうか?」 「うん。でも、朝から晩までバタバタしているから」 「だよな。上は小学生から下は赤ん坊まで。子どもがたくさんいるからな。未知、あんまり頑張りすぎるなよ。あとで一気に来るからな」 「僕はなにもしてない。遥琉さんと橘さんと柚原さんに甘えてばかりいるもの。あのね、ひろお兄ちゃん。譲治さんのところに行かないといけないの」 「だから?」 「だから、その……」 さすがに下ろしてとは言えない状況だった。

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