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番外編ヤスさんの怒り

「オヤジ!」 佐治さんが血相を変えて駆け込んできた。 「ヤス兄貴を止めてください!」 「どうした?」 「海堂に直接会って問いただすの一点張りで、俺らが何を言っても聞く耳を一切持ってくれません」 「会ってどうすんだ?返り討ちにされるだけだ」 「オヤジ、海堂が四季の両親を殺したって本当なんですか?」 「何だもう耳に入ったのか。お喋りなカラスが多いからな。耳に蓋をして、口にでっかい絆創膏でも貼っとけば良かったな」 「それじゃあ……」 「確たる証拠はないが、十中八九間違いない。佐治、ヤスを呼んでくれ。大事な話しがあると」 「分かりました」 「人払いを。ヤスと二人きりに……」 彼と何気に目があった。 「未知はいてくれ。きみにも聞いて欲しい」 いつになく真剣な眼差しで見つめられドキドキした。 「恥ずかしいからそんなに見つめないでくれってだろ?ころころ変わる表情が見てて飽きない。たまらん。まさに至福のひとときだ」 彼が愉しげににやりと笑った。

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