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番外編ヤスさんの怒り

「ソロ―キャンプを隠れ蓑に浮気をするのが最近の流行りみたいですよ」 「そうなのか?」 「都会の喧騒から離れて森林浴をしながらのんびりと一人の時間を満喫する。遥琉は未知さんがいなければ何もできませんからね」 「俺には不向きってだろ?分かっていることをいちいち言わんでもいい。嫌味しか聞こえないぞ」 「そう聞こえたのなら謝ります」 「やけに素直だな。何をしに来た?」 「遥琉に用はありません。私が用があるのは伊澤さんです。伊澤さんに頼まれて樋口さんの写真を地竜さんに送信したんです。やっと返信が来ましたよ。半日もかかりました。伊澤さん何度も言ってますが急ぎの場合は未知さんに頼んだほうが早いですよ」 「別に急ぎではなかったんだ。キャンプ場を管理している男性からある客のマナー違反と消灯後の騒音について他の利用者から苦情が来ている。どうしたらいいものかと根岸に相談があったから、それで気になってな。橘、世話になった」 「騒音?」 「だからアレの声がとにかくデカイんだと。コテージとか車の中でなら人様の迷惑にもならないが、テントのなか、つまり外だ。日本語じゃないから対処に苦慮していた。もしかしたら亡くなった夢華のまわりにいた女の一人かなと思ってな。やっぱりそうか」 伊澤さんが何度も頷いていた。

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