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番外編ヤスさんの怒り

「卯月さんどうしよう。兄ちゃんから電話かも」 「公衆電話から掛けてきているんだ。早く出てやれ」 「どう説明しよう」 まどろっこしくて見ていられないと彼が代わりに電話に出た。 「白雪美容室が放火された。しっちゃかめっちゃかに荒らされて金庫を抉じ開けようとしたが火の回りが予想に反し早かったんだろう。美容室に向かっていた白雪夫妻は自転車と衝突。ハツは転倒したときに頭を強く打って意識不明の重体。義夫も転倒したときに腰を打ったみたいだがぴんぴんしている」 ーそうか、良かった。ネットニュースで見て心配していたんだー 「弓削、久弥に代わるか?」 ーいや、いいー 手招きされ彼のそばに急いで行くと、スマホを指差した。 「弓削さん、未知です。声が聞けて嬉しい。手紙ありがとう。遥琉さんと久弥さんとヤスさんと弓削さんが帰ってくるのを待っています」 話したいことがたくさんあったけど電話代が大変なことになるから、弓削さんが聞こえるように大きな声で手短に話し掛けた。 ー勿体ない、俺は果報者だー 弓削さんの声は涙声に変わっていた。

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