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番外編弓削さんからの伝言

ヤスさんが何で? 弓削さんのこと好きなんじゃないの? はてなマークがぐるぐると巡った。 「ごめんなさい。僕には遥琉さんがいます」 「分かってますよ。そんなこと。俺もまだ死にたくありません。俺も弓削からの伝言を姐さんに伝えていなかったので。すっかり忘れていました。思い出させてくれて感謝します」 「誤解を招くような真似をするな」 「こうでもしないと弓削の気持ちが姐さんに伝わらない」 「あのなヤス……」 額に手を置いて、やれやれとため息をつく柚原さん。 鼻唄を口ずさみながらヤスさんがハサミで髪を何本かカットした。 「もしかしてそれ弓削に渡す気か?地竜みたく御守り袋に入れて」 「何で分かった?さすがは柚原だ」 自信満々に答えたヤスさんに柚原さんは苦笑いするしかなかった。 「納豆付きのご飯粒は捨てておきます」 「ありがとうヤスさん」 「こんなのお安いご用です。俺で良かったらいつでも呼んでください。柚原、そうやって疑いの目で見るな。間違っても地竜には渡さないから」 ヤスさんがにかっと笑った。 「じゃあ、そろそろ仕事に戻ります。組事務所が大変なときに留守してすみません」 「ゆきうさぎ丸を待っているお客さんがたくさんいるだもの。それにヤスさんと佐治さんにはゆきうさぎ丸を優先するようようにって遥琉さんも言ってましたし、くれぐれも運転には気を付けてください」 「分かりました」 阿武隈川流域にあるK市の郊外の地区の町内会長さんからゆきうさぎ丸に是非とも来てほしいと石井さんを介して連絡があったのは一週間前だ。 あらかじめ準備していた守り袋に僕の髪を一本ずつ入れると意気揚々と出掛けていった。

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