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番外編弓削さんからの伝言
「髪に納豆とご飯粒がねっぱってます」
「え?嘘。どこですか?」
髪を手で触ると、
「そこじゃありません」
クスクスと声を立てて笑うヤスさん。
「微妙に違います。じっとしててください。動かないで下さいよ」
ヤスさんの手が後頭部のあたりに触れた。
「取れないので少しだけ切ります。ポケットにハサミが入っているので取ってもらってもいいですか?」
「どっちですか?」
「右です」
言われた通り緑色のエプロンの右側のポケットに手を入れるとハサミじゃなくてりんご飴が出てきた。
「それは青空のおやつです。左側にないですか?」
ごそごそと探ると、
「くすぐったいのでそこはなるべく触らないで下さい」
身を捩らせるヤスさん。
「そんなこと言われても。動かないでって言ったのヤスさんでしょ?」
「そうでしたっけ?」
「惚けないで下さい」
「惚けてません」
「ヤス、オヤジがいないことをいいことに何をしているんだお前は。オヤジと弓削に言いつけるぞ。いいのか?」
柚原さんの声が聞こえてきたからギクッとした。
ヤスさんから離れようとしたら、
「姐さん」
腕を掴まれ引き戻された。そして、
「……死ぬほどに大好きです」
大人の色香を孕んだ低い声で耳元で囁かれた。
「えっと、そ、その……」
一瞬頭のなかが真っ白になった。
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