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番外編彼も地竜さんも子煩悩
「子どもたちを不安にさせないように、普段通りでお願いします」
「姐さん、分かりました。あ、そうだ。久弥から聞きました?」
「もしかしてハツさんと義夫さんのことですか?」
「そうです。ハツさんは無事です。義夫は何とか一命は取り留めたものの意識不明の重体です」
「ヤスさん、あの……」
ひろお兄ちゃんからある言伝てを預かった。
『手紙じゃなくたまにはヤスの声が聞きたい』いくら鈍感な僕でも弓削さんとヤスさんがお互いを想い合い仲間や友だち以上の感情を抱いているということを知っている。相手を大切に想うあまり、気持ちがすれ違ってしまうということにも。
「ヤスさん、弓削さんからなんですが……」
「姐さんと子どもたちの写真を送れってでしょう?昨日送信するのを忘れたからすぐに一太と奈梛の写真を送信します」
「そういうことじゃなくて」
しどろもどろになりながら言葉を紡ぐと、
「じゃあ、どういうことですか?」
ぐいぐいとヤスさんの顔が近付いてきて。気付けばすぐ目の前にヤスさんの顔のドアップがあったから心臓が飛び出すんじゃないか、そのくらいびっくりした。顔から火の出る思いをした。
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