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番外編彼も地竜さんも子煩悩

「奏音くん、めぐみちゃん、優輝くん、太惺と心望のことだからお兄ちゃんを取られたってふたりしてブスくれて駄々をこねると思うの」 「たいくんとここちゃんはわたしたちに任せて。なやちゃんたまにしか遊びに来れないから一太くんと遊びたいと思うの」 めぐみちゃんのなんとも頼もしい一言が何より嬉しかった。 「ディノンさん行っちゃったの?まだバイバイしてないのに。もっと遊びたかったのに」 一太は真っ先に地竜さんがいないことに気付き、目を潤ませてガックリと肩を落とした。 「あとねディノンさんと男のやくそくをしたんだよ」 「一太くん、どんな約束をしたか教えてもらってもいいですか?内緒なら無理強いはしませんが」 「ちょっとまってて」 一太が部屋に何かを取りに向かった。 「これだよ」 【わが息子一太へ】と書かれた封筒を橘さんと柚原さんに差し出す一太。 「見てもいいですか?」 「うん、いいよ」 中にはチラシと便箋が一枚ずつ入っていた。チラシは今月末に開催される隣町にあるダム湖で毎年開催されているマラソン大会のだった。手紙には【親子の部で出ることにした。楽しみに待ってろ。男のやくそくな】と几帳面な字で短くそう書かれてあった。 「パパと一仕事をしに行っただけです。用が済めば戻ってきますよ。一太くんとの約束を忘れる訳ありませんよ」 「ままたんの言う通りだ。地竜が今まで嘘をついたことはあるか?」 「ない。一太とのやくそく、いままでやぶったこといちどもない」 「じゃあ信じて待とう」 橘さんと柚原さんに宥められ手の甲で涙を拭うと大きく頷いた。

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